おp? 1スレ目523氏
目覚めたのは日の差した草原の上でだった。木に手をついてよろよろと立ち上がる。喉が乾く…。
反射的に首に手をやると、冷たく固いものに触れた。
「…ぁあ…」
震える手でゆっくり形を確かめる。首輪…。悪夢が思い出される。
いや、夢じゃない。間違いなくわたしは、地獄の真っ只中にいるのだ。
ツインテールの青い髪の少女…マリアは、
力なく膝をつき、声を押し殺して泣いた。
―コミックボンボンバトルロワイヤル―
重たいデイパックを担ぎ、草原を歩く。抜けるような青空とは対照的に、地面は雨水を含んでぬかるんでいた。
そうでなくても、彼女の足取りは重たい。
目覚めれば、また騒々しくものどかなサンクルスの一日が始まるはずだった。
―はろーえぶりばでぃ
はじめましてコンニチワ バトルロワイヤル実行委員のスルガ大納言です
今日はみんなで殺し合いをしてもらいます…―
マリアを含め、大勢の人間が集められていた。
暗い空間の、上空全面に写し出された頭巾の人物の声は、
陽気に、心底この状況を楽しんでいるようにそう言った。
―ふざけるな!
―ここから帰せ!
知らない多数の声が叫んだ。温かく迎え入れ優しくしてくれたサンクルスの住人たちの声でも
……辛い思い出ばかりが蘇る、月色の塔で
聞いた研究員たちの冷たい声でもない。
頭巾の男への非難の声は大きくなる。
同時に混乱する大勢の人間が動き回る。マリアは肩をぶつけられ倒れた。
これからどうなるんだろう…。マリアも含め、この空間は混乱と恐怖が占めていた。
―…マリア!…―
ざわめきの中でも、自分の名を呼ぶその声ははっきりと聞こえた。
よく晴れたあのサンクルスの島で聞いた、あの少年の声が。
「ああ…リュー…」
「奇遇ですね。…マリア…」
瞬間、マリアは逃げ出した。すぐ背後から聞こえた、その声から。
(ミカエル・シャークマン…!)
人混みをかき分け逃れようとする。
「マリア!キッチェ!いたら返事しろ!…おぉーい!!」
「リ…リューク!リューク!! わたしは…」
ぱんっ
乾いた音がして、静まり変える。
「ここ…え…?」
その場にいた誰もが、顔を強張らせ同じ方向を向いていたと思う。
音のしたほうへ振りかえると…人混みの中からでもよく見えるよう、掲げられたように高く浮かんだ奇妙な影がある。
すぐにつけられたスポットライトのような光がそれを照らした。
「うわぁぁぁぁ!!」
さっきまでの怒号より遥かに大きな叫び声が響いた。
あれは、…人…?
人混みの中から見上げては、それが「生前」どんな人物だったかはわからない。
体はビクビク痙攣し、首から吹き出された流血のラインはスポットライトの光の中を落ち、地上に降り注いでいる。
頭のてっぺんから鼻を通り、喉まで伸びた裂目の間から覗いていたぬらぬら光る脳は、
筋組織やらなにやらでかろうじてしがみついていた
顔の片側が引きはがされるうちに ゆっくりと露わになっていき、苦痛に歪んだ顔とともに、絶叫と非難の声で満ちた地上へと落ちた。
こ…こんな…ことって………。恐怖に凍り付き、マリアはそれを見ているしかなかった。
―なんだよこれ…―
―こ…声が…―
マリアを含めその場に立っていた全員の頭の中に、声は響いた。
「あ〜てす、てす。改めまして、わしは実行委員のスルガ大納言です。
これからのわしの話をちゃんと聞かないのは、喉を割られて死ぬことと直結するよ。
貴様ら…『アレ』のようになるのは御免だろう?」
『アレ』と指された死体は床に頭部と血だまりを残し、スルガ大納言の映る上空へと消えて戻って来なかった。
死にたくない…目には涙が湧き上がり、ガタガタと震えるマリアだが、
頭に直接送り込まれる非情な命令は、意識に擦り込まれるように理解を強要される。
おちゃらけた今までの口調とは違うスルガ大納言の、邪悪さに満ちた声が響く。
「…貴様らには実に容易いことをしてもらう…
『最後の一人になるまで殺し合う』、それだけだ。
一定期日以内に最後の一人にならなければ、その首輪が貴様たち全員の首を裂き殺す。
血をすすってでもあがき、もがいて見せよ!! …―以上♪」
上空のスルガ大納言の、頭巾から覗く目がにっこり笑い、頭の中を落雷のような閃光が駆け巡った。
「きゃぁああああ!!」
マリアの記憶はそこで閉じた。
至急された地図に描かれていた地形は、彼女たちの住んでいた世界の唯一の地上サンクルス島ではなかった。
「それじゃあ一体…ここは…」
ミカエルに捕われていたマリアを助け、ともにサンクルスへと脱出した生物兵器ダイダロスは今はいない。
自分を守護し導いてくれる存在はいないのだ…。
自分の身は自分で守らなくては…。
デイパックの中身を確認する。僅かな食糧や飲み水の入った水筒の下から、彼女の武器が見つかる。
「拳銃…」
ずしりと重たい。
「生きてリュークたちに会う。そして必ずサンクルスへ帰る…」
もし襲いかかって来る人間がいて、果たして撃てるだろうか…。
「生きて…リュークに………」
銃を握りしめ、草原の中をマリアはまた歩き出した。
マリア【健康】
武器・イザラの拳銃@王ドロボウJING
威力は高いが子供や女性が使うには向いていない大きめの拳銃。弾丸が10発装填してある。
またデイパックには、撃ったものを冷却し凍結させる「アイスビュレット」が10発入っている。
思考
リューク、ドーカイテイオーと合流
最終目標
リューク、ドーカイテイオーと合流し、サンクルスへ帰還する