暗い暗い闇の中、少年―天領イッキの意識は目覚める。
「ここ、何処?」
思わず少年は口走る。
最初は夢かとも思ったがどうやら違うらしい。
寝ぼけた思考を回転させ、自分が何故こんな所に居るのか思い出そうとする。
タマオやスクリューズとのロボトル。
アリカには新聞の作成を手伝わされる。
メタビーとの口喧嘩。
夕飯を食べ、風呂に入り、布団に入りそしていつもの日常は終わる。筈だった。
思い出すうちに暗かった洞窟内も何でともされているのか分からないがぼんやりと明るくなってきた。
洞窟の中は学校の体育館程度、周りには人がたくさん居る。
この異常な状態にイッキはますます混乱する。
他の人々も目覚め、狼狽する声、罵声、ヒステリックな叫び声、様々に聞こえる。
そして黒猫がそばに居る事に気付いた。
頭がでかく銀色の不気味に輝く首輪をしている。
「お前もここに連れてこられたのか?」
自分を落ち着かせる為、何気なく話しかける。
「ニャー」(そんなことオイラが聞きてえよ。)
イッキに話しかけられたサイボーグ猫―クロはとりあえず普通の猫のふりで答えておいた。
「そういえば、メタビーは何処に言ったんだろう。」
イッキは無愛想な雰囲気で答える黒猫を見て何故か相棒を思い出す。
(そういや、ジーさん、バーさんはこんな所に居ないよな。)
クロももそんなちょんまげ頭の子供を見て飼い主の事を思い出す。
一人と一匹が思いに浸る中、人々の混乱はピークに達していた。
そんな時だった。この場に似つかわしくない愉快すぎるファンファーレが鳴ったのは。
「れでぃ〜すあ〜んどじぇんとるめん!!!
みんな元気してるかな?わしは主催者兼司会のスルガ大納言。よろしく〜!」
あまりにも悪乗りしすぎのおっさんに会場中の人間が唖然とする。
しかし、次にその悪乗りしすぎのおっさんが放った言葉はさらに唖然とさせるものだった。
「あ、そういえばまだ大会の趣旨を説明してなかったね。
みんなにはこれから殺し合いをしてもらいます!」
あまりに悪趣味で冗談のような事を嬉しそうに喋る大納言。
そしてルールを淡々と語りだす。
参加者達は話の流れに付いていけず反論するものもいない。
「スルガ大納言、自ら尻尾を出しおったか!」
イッキとは離れていたもの良くみえる位置で少女が大納言の言葉を途中で遮る。
八代将軍、徳川ヨシムネその人であった。
「おや、これはこれはお久しぶり♪でも質問はあとにしてって言ったでしょう。」
大納言は変わらず、飄々とした態度でこれに答える。
「余は徳川家八代将軍徳川ヨシムネ。
これ以上、貴様の好き勝手させるようなことはさせぬ!」
いつもの彼女からは想像も出来ない雰囲気を漂わせ大納言に叫ぶ。
「仕方ないね。君をここで失うのは辛いがルールの説明もしやすくなる。」
頭巾から二つの眼光が醜く歪む。
「ばいばい♪」
爆発音が響く。そしてヨシムネの美しい顔はもうそこには無かった。
目の前で人が死に、イッキの頭の中は真っ白になる。
それでも人々の悲鳴が聞こえてくる。
誰かの怒りの叫びが届く。
大納言は構わず説明を続ける。
「ま、わしの言う事に逆らったり、ルール違反をするとこの首輪が飛ぶことになるから。
じゃあ、そろそろ始めようかな。ぐっど・らっくっ♪」
非常なゲームの始まりはそこに告げられた・・・
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第一話