少・女・遊・戯 ◆1e93pWOpLk
森の中を歩く少女がひとり。
彼女は最愛の兄とともに地球に降り、開始した花の戦争の行方を見守っていた――はずなのに、気がつけばよくわからない場所に立っていた。
これからここで殺し合いをするらしい。
この場所…島らしい洞窟に見知らぬ者達が集められ、自分と同じくらいの年恰好をした少女が壊された。
首輪――こうして歩いている彼女もその類にはずれる事はなく、その場にいた誰の首にもつけられていた。
強いものだけが生き残る。
彼女の母星では皆、そういったシンプルな考えを持って生きている。
突然はじまったこの殺し合いは金星人がつかさどるものとは違い、豹の戦士ではないただの地球人、異星人に動物。
カフアの作り出すような機械の者と様々な生き物がそろっていた。。
その顔ぶれはざっと四十…五十はあっただろうか。
その中には幼い頃にみて憧れたアカシャの保持者とその力の片鱗を抱いた少年もいて。
少女、ヤーヤ・トーカーズの心は踊った。
――私は戦士ではないから、あなたと殺しあえない――あの時の言葉を撤回するチャンスだと思った。
あの少年の目の前に現れれば……始められる。
体を交えて、刃を突きたて、肉を断てば、あの子はどんな顔をして苦しむのだろう。それを想像しただけで頬が紅潮し、笑みがこぼれる。
だが声をかけようとした次の瞬間、うっそうと茂った森の中にヤーヤは放り出された。
「もぅ…なんなんですの?」
まったく知らない土地に苛立ちを覚えながら先ほどの場所へ戻ろうと坂の下方に向かって歩く。
硬質な床でなら軽快な音を立てるヒールはいびつに続く急な斜面を降りるにはいささか不便だった。
「………」
本当はさっきの場所よりも元の場所――兄のいる処へ戻りたかった。
この島にはあの二人以外、知らぬ者ばかり。
ひとりでいる事は恐くはない。何かを殺すのもべつに心は痛まない。だが、本当にここから帰れるのか――それだけが気がかりだった。
「お兄様…」
ザッ……パカラッパカラッ、パカラッ、パカラッ……
足音、というよりも蹄の音が近づいてくる。それは尋常ではない速さで真っすぐにやってきた。
「!!!」
正面きって向かってくる、速度を落とそうともしないその気迫にヤーヤは歩みを止める。
馬だ。
否、馬というよりもそれはUMAである。
馬面ではなく正面から見てしっかりと人面の、馬の姿をしながらも正面からではどうあっても二足歩行で疾走する意味不明の生命体は彼女に気づく暇もなく通りすぎ。
驚きつつも緩やかに避けたヤーヤの豊かな緑髪をあとになびかせた。
…パカラッパカラッ パカラッパカラッ……
金星人特有のとんがった耳をピンと横に張りつめたまま、ヤーヤはゆっくりと振り返って遠ざかっていく白馬を見つめる。
「な、なんなのかしら? 今のは…」
あんなモノも殺しあいの中に入っているのだろうか。
「…あはっ あはははっ」
一時とはいえ呆気に取られてしまった自分が可笑しくて声を漏らす。
ヤーヤにとって躊躇するものでもなく、容易いことなのだ。
たった今通り過ぎていったUMAの息の根を止めることも、これから沢山の人を殺すことも。そうしてたった一人生き残ることも難しくない。
けれど彼女の手にとても良く馴染んだあの大剣はなく、自らに与えられた武器はまだ確認すらしていなかった。
歩けば肩にかけたままのリュックが弾む。いろんな物が入っているのか、ずっしりとした質量。
背中で揺れる荷物のリズムに少女は口ずさむ。
「なにかしら♪ かしら♪ 私の手にする ヒトを殺めるその武器は♪」
軽快な音こそ出ないが土を蹴っては踏みしめるヒールの感触。
ステップを刻むように歩みだして、いつこの荷物をほどいてみようかと思い立つ。
今すぐといて、さっきの馬を八つ裂きにしてやろうか。それとも馬は馬らしく乗り物として死ぬまでコキ使ってやろうか。
楽しさだけにつつまれて、ヤーヤは地面に転がっていたそれをいとも簡単に蹴りあげた。
「……あら?」
ぱかーん。
ごつん。
ざっ!!
蹴られた物体は飛びあがり、木にぶつかって草むらに落ちるとゴロゴロと戻ってくる。
丸い形をしたそれには顔があり、ヤーヤの前で止まりはしたが目を回していた。
「…………」
彼女はそれを見下すように黙っていたが、しゃがんでその物体を見つめる。
人の顔が描かれた球体はようやく焦点があったのか、ヤーヤの姿を確認すると声を発した。
「あ、あの…拙者を助けてくれでござる」
「…お前はなんだ」
しゃがんだまま、とても冷めた目でヤーヤは言い放つ。
球体から見れば少女のパンツは丸見えで。オスらしいその球体はグッと堪えるように唸るとそれを見まいと必死で少女の顔を見上げた。
「せっ、拙者はサスケと申す。この不本意な戦い… ばとるろわいやる とやらに巻き込まれた一人でござる」
「頭ひとつ? あなた…あの場に、いたかしらね」
白く細い指がサスケと名乗る球体をつつく。
「体はついさっきこの首と別々になってしまってだな、たっ…頼みが…そう二つほどあるでござる。聞いてもらえるか?」
「………」
真摯なまなざしが効いたのか、少女はコクリと頷く。顔つきは相変わらずだが戦う気はないようだ。
サスケはその姿勢を信用して素直に口をひらいた。
まず自分のこと。首輪のこと。
先だって失くした自分の体――それを見つけて、元の姿に戻して欲しい。
「…って、もしもし?」
じっと話を聞いていたはずの少女はふたつの頼みごとを聞きおえないうちに自分の荷物を開いていた。
中身を確認する。
『地図』『コンパス』『着火器具、携帯ランタン』『筆記用具』『水と食料』『名簿』『時計』…
異星人である彼女には用途の理解できる物と出来ない物があったが、唯一の武器となる『支給品』を見つけた時、にやっと微笑んだ。
「……頼みはこの二つでござる…聞いてはもらえぬのか!?」
話をはじめから聞くつもりはなかったとも言える態度にサスケは喰いついた。
「興味ありませんわ」さらりと流す緑の髪の少女。その視線は手にした物に注がれている。
「な、何故!? おぬしの首にもついているその首輪がひとつ、手に入れば」
「どうなるワケでもないでしょう?」
そこで初めてサスケを認める。
「あなたのその頭ひとつ、解析する術など持ってはいない。…関わる意味もありませんわ」
見透かしたように少女は言う。ザックの中で触れた得物の感触をたしかめながら。
「こんな首輪……これがあったとしても、私には何ら問題ないんですもの」
笑うように、歌うようにヤーヤは「だって」とつけたした。
「私、いちど死んでますの♪」
―――どんな風に『これ』は使えるんだろう。
人とはどこか離れた、人形の様な肌の色で少女は、ひやりとする笑みを浮かべた。
「だからどうなっても構わない。……けれど、理不尽にあの子の様になるのはまっぴらですわね」
あの子。
とくに可哀想とも思わなかった首の爆ぜた少女の事を思い出して、ヤーヤは自分の首にしっかりと巻きついている輪を指先でそっと撫でた。
まぁ頭を無くしても戻れないこともないのだけれど。出かかった言葉をのみ込んで、サスケと名乗った球体を軽くつついてから持ち上げた。
「おっ、を…?」
不安定に揺れながら視界が移動する。
ささいな振動。小突かれたのと浮遊感、それだけでも頭の中で何かがきしむような感じ。
痛みなのか…それを無視して少女の手のひらの上で少女を見あげる。相変わらず、自分を見つめる冷めた目つきは変わらない…が。
「見つけてあげますわ」
言葉をはなった唇がなまめかしい色をして笑み、サスケは痛みと共に視界に入ってきたそれに一瞬みとれた。
「か、かたじけないでござる…」
「で・も。気が変わるかもしれませんわよ? この中に入ってたお道具、はやく使ってみたいんですもの」
ザックの中に入ったままの支給品。それが何か、球体にはわかりもしない。
その球体を胸に抱いたヤーヤはうっとりと夢見心地だ。
「あなたと胴体をくっつけて…試し切りも悪くないですわよね? ふふっ」
「ア…ハハ…… ……それは嫌でござるよ…」
少女が手にした喋る球体、サスケは本音をない交ぜにしてぎごちなく笑う。
後頭部に爆弾を抱え、首輪のついた胴体の行方の全てを、己はなんと気まぐれな女神に託してしまったのだろうとほんのり後悔した。
【F-06 坂の下F-05との境界線あたり 15:45行動開始】
【ヤーヤ@ククルとナギ】
[状態]健康? 時々高揚するがいたって冷静
[装備]大きなリボン、ミニスカート、ピンヒールのブーツ、球体(サスケ)
[道具]中身は確認済み
[思考]1.お兄様の元へ戻る
2.今はサスケに協力
3.ククルもしくはナギに会ったら殺しあえる
[備考]◎彼女はミクトラン産の生き人形です
傷つくと自動的にイバラが生えてきて修復される特殊な体ですがそれは首輪により制限されています
本人はまだ怪我もしていないので能力の制限をされているのに気がついていません
◎首輪による爆発で損傷する可能性の危惧と気まぐれにより一時的に協力という形をとっています
気持ちの変化はつなげる方にお任せします
本人はまだ怪我もしていないので能力の制限をされているのに気がついていません
【サスケ@がんばれゴエモン】
[状態]首だけ
[装備]無し。どちらかというと自分が装備品に近い
[道具]なし(テイオーが持って行った)
[思考]1.少女に体のあるところまで運んでもらう
2.首輪を解析できる者を探し、全員で脱出
[備考]頭の中に首輪。取り出しは不可だがサスケの頭を武器にはできる
坂道を転げ落ちてきたので体の正確な位置がわかりません。“坂道の途中に体があるはず”程度の認識です
自分を襲ったのは誰か、またどんな姿なのかを知りません
無理矢理首輪を突っ込まれてるため思考がおかしくなる可能性があります
※F-06の真ん中ぐらいの不自然に盛り上がった地面にサスケの体は埋まっています
※体を回収した後にサスケの顔をサスケの体に戻すことは可能です
【F-06からG-07へ逃走 15:30】
【ドーカイテイオー@海の大陸NOA】
[状態]やや焦り
[装備]不明
[道具]二人分の荷物(自身の支給品は確認済み・サスケの支給品は未確認)
[思考]1.とりあえず全力でこの場を離れて人殺しの事実を隠蔽
2.愛しのリュークと合流
3.死んでたまるもんですか!
4.長いものには全力で巻かれる
5.今、なんかいたわね?